雨の日のアーケード街で見かけた君は
ふとテレビで見かけたドラマの女優のようで
そのさりげない訳ありのようなクールな微笑みが
何故か僕を惹きつけた
降り注ぐ雨の一粒一粒を愛しそうに見つめている
少し悲しそうで切なそうで
「何があったの?」と親しく聞けないその距離感
きっと知っているのは僕の方だけなのに
そんな雨が包むメロディーが
二人の空間を作っているようでとても嬉しかった
名前も何も知らない君に付けたネームは「雨の日の君」で
これからも何度もすれ違うんだろう
雨の日の空を見つめているんだろう
何か足りないその何かだけが
僕に急げ急げとはやし立てる
「ねぇ君」って呼びかけるなんてとても軽すぎるんだよ
もっと何か意味のある言葉で君に触れたいよ
だからもっと何か大切な言葉を
いつももどかしい気持ちのままで
与えられた時間を逃してしまって
僕はいつも切なくなってしまうんだよ
でもどう声をかければいい?
知っているのは雨の日だけの君なのに
君の見ている景色になじむように
雨の日はいつもおなじ場所で佇んでいた
ふと君が思い出す情景の中に
ほんの少しだけでも僕が映るように
でもきっと君はまだ僕が君のために
ここにいる事知らないだろう
もう何度目の雨だろう
君に出逢ってからもうどれだけ経ったのだろう
君と僕をつなぐものはこの雨だけ
まだ晴れないでくれないか
もう一歩 もう一歩
今日の雨は少し長くて佇むアーケードの中の君と僕
神様がふと背中押してくれた気がした
「何を話したらいい?」そんな言葉思い浮かばないまま
僕は君の近くに立った
君は雨の音を聴いているようだったから
ついこういう言葉も自然に出たんだ
「雨の音って和みますよね」
出来るだけ優しく雨の音を消してしまわぬように
君は長年の連れ添いに話しかけるように
「そうですね」って微笑んだ
君に一歩近づいたそんな雨の日だったね